トピックス0016 評価者のつぶやき13 被験者のパソコンスキルを読む

トピックス0016

評価者のつぶやき13
被験者のパソコンスキルを読む

2009.03.03 萩本

 

ユーザビリティテストに参加する被験者のパソコンスキルをあらかじめ知っておきたいと思うことがしばしばあるが、これが意外と難しい。弊社では被験者募集時に簡単なアンケートを行っており、どのような情報を聞き出せばその人のスキルがわかるのかいろいろと試しているが、一般的にはパソコンの使用経験年数などを聞くことが多いだろう。このとき、経験年数が長ければスキルが高いかというと、そうとも限らない。

昨年2008年に実施したあるユーザビリティテストの被験者はいずれもWindowsユーザで、以下のようなプロフィールだった。

試みに、各被験者のパソコンスキルを私がどのように考えたか紹介してみたいと思う。

 

あらかじめ断わっておくが、スキルの読み方にただひとつの正解があるわけではないし、私の考え方が適切だと主張したいわけでもない。さまざまな考え方の一つだと理解していただきたい。

では、せっかくなので、発話ログ風に…。

「Aさんは経験8年か。8年前というと2000年。Windowsで言えば2000かMeあたりか…。インターネットはすでに充分普及して、一般の人たちもインターネット目当てでパソコンに手を出すようになっていたころだから、タイミングとしては早すぎず遅すぎずといったところだな。

たぶんパソコン自体に積極的に興味があったというよりは、インターネットに興味があったとみた方がいいだろう。だとすると、積極的に新たなソフトをインストールしたりカスタマイズするというよりは、Webブラウザとメールを中心とした使い方かな、きっと。

でも、そのときAさんは36歳だから、学生ではなかったわけだな。学生時パソコンに触れている場合、パソコンをいじり倒している人もいるけど、社会人だと、会社で使うパソコンは会社からの支給品で自由にいじれないし、自分が所有しているものは休日しか触れないので、意外と決まった使い方しか知らないことが多いんだよな。

その代り、年齢的に実務担当者として仕事をしているはずだから、パソコンを使った作業は8年間みっちりやっているだろう。」

「Bさんは経験12年だから1996年からパソコンを使っているのか。パソコンの一般への普及はWindows95の発売で爆発的に進んだけど、インターネットがメジャーになるのはもう少し後のはず。1996年にパソコンに手を出したということは、もともとパソコンに興味を持っていた可能性が高いだろう。こういう人は、パソコンを積極的に理解しようというモチベーションが高いから、スキルも高いかもしれないなあ。

でも54歳というのは、なかなかパソコンに適応できない年齢かな。…待てよ、12年前は42歳だよな。まだ新しい知識を吸収できない年齢ではないな。仕事では、部下はいても、自分でバリバリ報告書やプレゼン資料を作るだろうな。家庭では、30歳で子供ができたとして12歳。この年齢なら、パソコンのセットアップはお父さんが引き受けることになるだろうから、Bさんは、セットアップもアプリケーションの操作も、全部自分で体験しているはずだな。」

「Cさんは、3人の中で一番経験が長くて14年か。1994年から使っているということは、Windows3.1?もしくは、MS-DOS、Unix、MacなどのWindows以外のOSなのかな。Windows95以前にパソコンに手を出している人は相当珍しいなあ。特殊な仕事なのか、本人がよほどパソコンに興味を持っているのか。いずれにしろ、年齢の割にパソコンには詳しいかもしれないぞ。

ああ、でも14年前すでに50歳だったのか。この年齢だと、パソコンを使う仕事は部下に任せていた可能性があるなあ。大学生の子供がいてもおかしくないから、難しい作業は子供にやってもらったかもしれない。実際に本人がパソコンに接している時間は少ないと考えた方がよさそうだ。

50歳から64歳までの14年間の経験はどれだけスキルを高めてくれるんだろう?さすがに20代、30代と同じようには上達しないだろうなあ。」

ということで、私がイメージした3人のスキルレベルの順位は、

Bさん>Aさん>Cさん

だった。実際にユーザビリティテストでの様子を見た結果、おおむねイメージどおりだったように思う。

我ながら面白いと思うのは、44歳を単なる数字の44、パソコン使用経験12年を単なる数字の12と見るのではなく、実際の生活者としての姿を思い浮かべていることである。そうすることで、ごくわずかのプロフィール情報に自分で情報を追加して、より精度の高い解を得ようとしたのである。

追加した情報は、パソコンやインターネットの普及がいつ頃であったかというIT分野のトレンド情報と、年齢なりの社会的立場、家庭での役回りなどの情報。いずれもそれほど特殊なものではなく、特に後者は、普通に生活している人が普通に持っている感覚に過ぎない。

ユーザビリティ活動では、このような“ごく普通の感覚”が大変役立つことがある。パソコンスキルを判断する場面に限らず、常にこの感覚を磨いておきたいものである。


2009.03.03作成 2009.06.08フォーマット修正