トピックス0011
2005.08.04 田渕
初めて訪れる駅や空港内では迷うことがありませんか。これは海外に限らず国内でも同じ経験をするわけです。つまり、迷うということは、言葉が通じるか否かでなく、視界に入る全てのものの中から、有用な情報をいかにタイムリーに得られるか否かがキーになるともいえるでしょう。

写真は今年4月、スイス・チューリヒ国際空港の到着ゲート階で見かけたサインです。「この通路を通過し終える前に、次のフライト案内モニタで出発便情報を確認して下さい。」という意味です。疑問形のフレーズと“before you leave this floor.”がストレートな表現で分かりやすかったので、とても気に入りました。私はすでに機内にいる時からトランジットのことが不安でしたが、このサインを見たおかげで誰に尋ねることも無くスムースに乗り換えができました。ちなみにトランジットは生まれて初めての経験でした。
一方で、日本の空港や駅、ショッピングセンター、オフィスビルにある最近のサイン計画は、文字、サイズ、色彩、アイコンなど視認性、判別性を意識した統一感のあるデザインになっており、快適に利用できるようになっています。しかし、往々にして迷ってしまうことが起こります。日本には“案内”、“行先”、“場所”、“許可”、“禁止”、“命令”など、あらゆる場所にサインが無数にあるにも関わらず、本当に必要なサインが欠けていることがあります。一体なぜでしょうか。サインの表示や掲示の違いは日欧のサービスの差か、それとも指示されないとやらない、またはわからない日本の国民性を示しているのかも知れませんが、私が言いたいのはそんなことではありません。チューリヒの空港には必要なところに計画された上で、サインが掲示されていたわけですから見習う部分がきっとあるはずです。
写真のサインは、利用者の補助的な行為を促すサインといえます。このおかげでスムースな乗り換えが可能になり混雑が緩和されます。また尋ねる必要もないため職員を配置する手間も要りません。高速道路の「○×方面は左車線によれ」に似ています。このようなサインがもっと日本にもあってもいい、と私は思っているのではなく、ここを通過する利用者の気持ち(多くはトランジットに対する心配、不明点を抱えている)で通路を歩かなければ、このサインの必要性は見出しにくいと思っています。
また、このサインの巧みなところは掲示場所です。写真の奥に見えるように、ここは高級時計や香水などの美しい写真広告が掲示されている柱が続く通路です。空港の利用者ならやはり広告に目が行くと思いますが、その並びに掲載しているおかげでおのずと視界にサインが入ってくるのです。
もし、テストユーザを使い、事前にユーザビリティテストを実施すれば、このようなサインや掲示場所が導き出されても不思議でない気がしました。もちろんチューリヒ空港がそのようなテストをやったのかどうか私は知りません。職員のアイデアで設置されたサインだったかも知れません。いずれにせよユーザビリティテストといえば、家電製品、ソフトウェア、WEBサイトと思われがちですが、施設におけるサイン計画でもこのテストは役に立つのではないかと感じました。
2005.08.04作成 2009.06.09フォーマット修正