HR2009-10 “捨て方表示”は役立っている? 食品パッケージ

HR2009-10

“捨て方表示”は役立っている?
食品パッケージ

2009.10.30 萩本

背景

“捨て方表示”の例

ゴミの分別やリサイクルが重視されるようになってずいぶん経ち、その意識は一般にもかなり根付いているようです。それに伴い、使い終わればゴミとして分別またはリサイクルされる製品パッケージにも、工夫が見られるようになりました。例えば、パッケージの素材を示すマークや、ラベルをはがしやすくするミシン目なども、そのような工夫の一つでしょう。

今回注目したのは、捨て方の手順を図で説明した表示です。私自身は、このような“捨て方表示”の存在に、あるとき突然気づきました。それ以降意識するようになり、なるべく説明に従って作業をしようとするのですが、たまにうまくいかないことがあります。

一般的には、このような“捨て方表示”にどのくらいの人が気づいているのでしょうか。そして、その説明のとおりうまく作業ができているのでしょうか。今回のレポートでは、このような疑問を検証してみました。

アンケート調査の実施

弊社にモニター登録されている方々に対して、Webアンケートを行いました。今回調査の対象とした食品パッケージは、以下のような「牛乳パック」と「調味料のビン」です。

「牛乳パック」の例

「調味料のビン」の例

「牛乳パック」とは、このような形状のパッケージで、牛乳、ジュース、お茶なども含めます

「調味料のビン」とは、このようなキャップ形状の容器で、しょうゆ、めんつゆ、お酢などの液体調味料に使われているものです

これらのパッケージについて、以下のような質問をしました。

アンケートに回答していただいたのは、97名(男性40名、女性45名、年齢は20〜72歳)でした。

日ごろの捨て方

(1)牛乳パック
日ごろの捨て方(牛乳パック)

牛乳パックの日ごろの捨て方について、手順を細かく記述してもらい、評価者がその内容を読み取って、おおまかに分類してみました。

全97名中51名(52%)が、洗う、乾かす、開くという3つの作業を行った上で牛乳パックを捨てていることがわかりました。これはまさに“捨て方表示”に書かれたとおりのやり方です。つまり、約半数の人は作り手が期待しているとおりに捨てていました。

牛乳パックを切り開かずにたたんで捨てるという方が21名(22%)もいたのはやや意外でした。この中には、リサイクルゴミではなく、燃えるゴミとして捨てると書かれている人もいました。ただし、その中には、自治体のルールに従っている、切り開くことを知らない、あるいは知っているけれどやらないなど、いくつかのケースが含まれているものと思われます。

面白いケースとして、捨てる前に再利用するという回答が7名(7%)からありました。その内訳は、以下のようなものでした。

この中には、再利用した後、結局切り開いてリサイクルゴミとして捨てる場合と、燃えるゴミとして捨てる場合があるようでしたが、ここではとにかく、再利用するということで一つのグループとみなしました。

(2)調味料のビン
日ごろの捨て方(調味料のビン)

調味料のビンについても、日ごろの捨て方について答えていただきました。ビンの洗い方やラベルのはがし方など詳しく書いてありましたが、ここでは、キャップの扱いに着目して大まかに分類してみました。

キャップを外して捨てるという方は49名(51%)でした。この方たちは、キャップを外す手段については特に明記されていませんでした。

それに対して、キャップを外すときに道具を使うと明記していた方が6名(6%)いらっしゃいました。使う道具は、フォーク、棒、専用の器具、はさみ、栓抜き、カッターナイフだそうです。このうち4名の方は“捨て方表示”に気づいたことがないそうです。ということは、表示どおりにやれば手でキャップを取り外せることを知らずに道具を使っていたかもしれません。

9名(9%)の方たちは、キャップは外れる場合のみ外すそうです。確かに、ビンによっては、キャップを外すことが非常に難しいものもあります。そのような場合はそのまま捨てているということです。

“捨て方表示”に気づいたか

(1)牛乳パック

アンケートでは下のような例を示し、このような表示に気づいたことがあるかどうかを質問しました。結果は以下のとおりです。

牛乳パックの“捨て方表示”サンプル 説明表示に気づいたか(牛乳パック)

「気づいた」が80名(82%)で、牛乳パックの“捨て方表示”の認知度はかなり高いようです。牛乳パックは、老若男女を問わず手にする機会があるので、多くの方が目にしているようです。

また、比較的デザインが統一されているので、メーカーや飲み物の種類に関わらず繰り返し同じような表示を目にすることになり、印象に残りやすいのだと思われます(牛乳パックの“捨て方表示”が規格化されているのか確認できませんでした)。

(2)調味料のビン

牛乳パックと同様、最近の調味料のビンで時々見られるこのような“捨て方表示”に気づいたことがあるかどうかを質問したところ、以下のような結果となりました。

調味料のビンの“捨て方表示”サンプル
調味料のビンの“捨て方表示”サンプル
説明表示に気づいたか(調味料のビン)

調味料のビンでは、「気づいた」が51名(53%)となり、牛乳パックと比べるとかなり認知度が低いことがわかりました。

スーパーで調味料のビンを見てみると、“捨て方表示”が書かれていないものもかなりあるようです。ですから、「気づかなかった」と回答した方の中には、本当に“捨て方表示”を一度も目にしたことがないという人も含まれていると思われます。

表示のデザインも統一されておらず、製品によって図や説明文の内容も異なり、表現もまちまちです。1度見たぐらいでは印象に残らないのではないでしょうか。

また、このような調味料は調理の途中で使われるものも多いため、家庭の中で調理をしない人はそもそもビンを手にする機会が少ないので、気づきにくくなるものと思われます。

“捨て方表示”に従って捨てているか

実際の捨て方(牛乳パック)
実際の捨て方(調味料のビン)

牛乳パック、調味料のビンとも、おおよそ半数の方が表示に従って捨てたと回答していました。

牛乳パックは、“捨て方表示”に気づいた人は82%でしたから、単純に数字だけで見ると、全体の約30%の人は、表示に気づいたのに従わなかったという計算になります。

表示に気づいたのに従わなかった理由としては、例えば以下のようなものがありました。

一方、調味料のビンは、「気づいた-気づかなかった」の割合と比較的近いので、“捨て方表示”に気づけば、そのとおり実行する人が多いということでしょう。

さらに「説明表示どおりにやろうとしたが、うまくできなかった」と回答した方が3名いらっしゃいました。これは“捨て方表示”を読んでも理解できないということでしょうか。それとも、理解できても実際にキャップを操作する段階でうまくいかないということでしょうか。いずれにしろ、何らかのユーザビリティ上の課題があることがうかがえます。

“捨て方表示”は必要だと思うか

表示は必要か(牛乳パック)
表示は必要か(調味料のビン)

牛乳では70名(72%)、調味料のビンでは82名(72%)の方が、“捨て方表示”は必要だと回答しました。調味料のビンの方が割合が多いのは、表示の存在に気づいていなかった人が多い分、表示に対しての期待が大きい、実際に説明なしではキャップを外すのが難しいと感じているということでしょう。

表示が必要と考える理由として、捨て方を説明するという本来の意味以外に、分別やリサイクルを意識づける効果を期待する声も目立ちました。

実際にやってみると

社内の2名のスタッフに、実際に牛乳パックと調味料のビンを使って捨てるための作業をやってもらいました。“捨て方表示”の存在に気づき、それに従って作業をする場面で、何かつまずく要素があるのでしょうか。

被験者 Aさん Bさん
    • 普段、牛乳パックは専用のはさみで切り開いている
    • 普段は、調味料のビンのキャップは外さない
    • 普段は、牛乳パックは切り開かない
    • 普段は、調味料のビンのキャップは外さない
牛乳パック 使用した牛乳パックの“捨て方表示”
作業中の様子
使用した牛乳パックの“捨て方表示”
作業中の様子
調味料のビン1 使用した調味料のビンの“捨て方表示”
作業中の様子
使用した調味料のビンの“捨て方表示”
作業中の様子
調味料のビン2 使用した調味料のビンの“捨て方表示”
作業中の様子
使用した調味料のビンの“捨て方表示”
作業中の様子

2人の被験者の様子を観察したところ、いずれのケースでも、最終的に正しく操作できていましたが、その途中では以下のようなつまずきや戸惑いなどが見られました。特に、調味料のビンは、“捨て方表示”の内容、実際のキャップを外す操作とも、改善の余地が残っているように感じました。

【牛乳パック】
【調味料のビン1】
【調味料のビン2】

感想

今回のアンケートでは、牛乳パックや調味料のビンを特に何もせずそのまま捨てるという方もいらっしゃいましたが、それが良いか悪いかを議論することは今回の調査の趣旨ではありません。そもそも、ゴミの捨て方には自治体やマンションなどで様々なローカルルールが存在するので、正しい捨て方はひとつではないのです。ただ、自治体のルールと、パッケージに書かれた捨て方が一致していないことは、ユーザーにとっては混乱の素でしかないように思います。捨て方のルールを全国的に統一するというのは、難しいことなのでしょうか。

捨てるための作業は、モラルとして必要なことだとは思いますが、それがユーザーの負担であることは事実です。より楽にできれば、それに越したことはありません。これからも、簡単に捨てられるように工夫されたパッケージが出てくることでしょう。

そういう意味で、調味料のビンのキャップが簡単に取り外せるというアイデアはすばらしいと思いますが、“捨て方表示”の認知度、わかりやすさ、実際の操作の確実性などで改良の余地がうかがえます。後もうひと工夫に期待したいと思います。


2009.10.30作成 2011.09.07フォーマット修正