HR2009-05
2009.05.29 萩本

2011年7月24日の地デジ(地上波デジタル放送)完全移行後、それまでアナログ放送に使われていた電波帯域を何に利用するかはまだ決まっていませんが、さらにテレビ番組のチャンネルが増える可能性もあるようです。今でもすでに地上波の他にBS、CS、ケーブルテレビなどがあり、同じ時間に放送されているチャンネルがいったいいくつあるのか数え切れないほどです。さらに、DVDも、ゲーム機も、時にはパソコンの画面もテレビに表示させたりするのですから、現在のテレビは、放送受信機というより多目的ディスプレイと考えた方がよさそうです。
多忙な現代人は、見たい番組の放送時間にテレビの前にいるという保証はありません。私自身も、見たい番組はとりあえず録画して後から見ています。いざ録画することに慣れてしまうと、いつでも好きな時間に見られ、一時停止も早送りも巻き戻しも可能なこの見かたの方が、リアルタイムに放送されている番組を見るよりずっと合理的だと思うようになりました。パソコンの世界では、YouTubeのような動画コンテンツが登場し人気を博しています。これもやはり時間を選ばず、ユーザの好きな時に好きなコンテンツが見られるサービスです。
こうして考えてみると、テレビ自体の多目的ディスプレイ化、動画コンテンツを自分のペースで見たいというユーザの欲求によって、リアルタイム放送を見る人はだんだん減っており、他のコンテンツを見る人が増えているのではないかと思えてきます。今回はこの仮説を“テレビ利用方法”という観点で調べてみました。
当社にいつも協力してくださるモニタ登録者の方々と当社スタッフに、テレビ利用方法について、アンケートで質問しました。
(1)リアルタイム放送の視聴時間
(2)以下のテレビ利用方法それぞれについて、最近5年間でどのくらい利用機会が増えたか
(3)上記のテレビ利用方法それぞれを、今現在どのくらいの割合で利用しているか
19歳から77歳までの男女、全79名の方から回答をいただきました。
アナログ放送、デジタル放送にかかわらず、1週間当たりのリアルタイム放送視聴時間をたずねたところ、有効回答77名の平均は、18.0時間/週でした。しかし、視聴時間ごとの割合を見てみると以下のような結果になり、半数近くに人は、1週間に10時間以下しかリアルタイム放送を視聴していないということがわかりました。1日あたり約1.4時間以下と考えると、意外と少ないと解釈できるかもしれません。

では、リアルタイム放送の視聴時間は増えているのでしょうか、減っているのでしょうか。
さまざまなテレビの利用方法に対して、最近5年間での利用時間の変化を聞いたところ、以下のような結果となりました。リアルタイム放送は、「増えた」という人より「減った」と回答した人の方が多い結果でしたが、それほど大きな差があるようには見えません。「増えた」が比較的多いのは「自分で録画した番組」です。リアルタイムで番組を視聴せず、録画して見るという視聴スタイルが増えているということだと思いますが、思ったほど決定的なものではなさそうです。
今後の動画コンテンツ提供方法として注目されている「テレビ向けオンデマンド動画配信サービス」も特筆するような変化は起こっていませんでした。
意外なところでは「ビデオカメラで撮影した映像」「ゲーム機の画面として利用」は「減った」という意見がやや多い結果となったことです。

実際のところ、リアルタイム放送は、テレビを利用している時間のうちどのくらいの割合を占めているのでしょうか。
以下のグラフは有効回答79名の平均を示したもので、平均的なユーザがテレビをどのような利用方法でどの程度使っているかを示していると考えてください。リアルタイム放送は、テレビ利用時間の60%。以下、自分で録画した番組(22%)、レンタルもしくは購入したDVD/BD/ビデオ(9%)、ゲーム機の画面として利用(4%)と続きます。
テレビ本来の機能であるリアルタイム放送の視聴が60%に過ぎないというのは、予想以上に少ないですが、オンデマンド動画配信やビデオカメラ、デジタルカメラの映像を映すといった新しい使い方がそれほど多いわけでもないことがわかります。

では、最初に私が想像していたような、テレビをリアルタイム放送の視聴以外の目的で積極的に使っている人はいないのでしょうか。上記の結果はあくまでも79名の平均ですが、この中には、ほとんどリアルタイム放送をご覧にならない方も含まれています。
ここでは、リアルタイム放送以外の各利用方法について、全79名の中で最も多かった6名のデータを取り出してみました。

【Aさん 35歳/女性】
リアルタイム放送と自分で録画した番組しか見ませんが、そのうち95%は録画した番組という方です。録画番組をよく見ている私としては、とても納得できる利用スタイルです。
【Bさん 32歳/女性】
レンタルもしくは購入したDVD/BD/ビデオ派の方です。ただ、この方はリアルタイム放送も40%は利用されています。
【Cさん 33歳/女性】
Cさんはオンデマンド動画配信サービスを35.7%も利用されている未来志向(?)の方です。動画配信、DVDの利用が多いため、リアルタイム放送視聴時間は28.6%と低くなっています。
【Dさん 42歳/女性】
Dさんは、テレビにビデオカメラで撮影した映像を映したり、パソコンモニタとして利用される方です。広くいろいろな使い方をされていますが、リアルタイム放送はわずかに10%です。
【Eさん 64歳/女性】
Eさんは、リアルタイム放送よりもデジタルカメラ画像をテレビでよくご覧になっている方です。
【Fさん 38歳/男性】
Fさんは、テレビをゲーム機の画面表示に40%使用している方です。ただ、この方はゲーム以上にリアルタイム放送をご覧になっています。
ここに挙げた方たちは、決して多数派ではありませんが、今後のテレビの使われ方の可能性を示しているとも言えると思います。
今回の調査を開始するにあたって、リアルタイム放送の利用は相当少なくなっているのではないかと予想していましたが、結果を見てみると、私の予想よりはずっと多くリアルタイム放送が視聴されており、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
それでも、一部の人たちはリアルタイム放送以外の受信以外の機能を積極的に利用していました。このような使われ方が今後どれだけ一般的になるのかわかりませんが、テレビを作る側も使う側も“テレビはリアルタイム放送を見る機器”という固定概念をいったん捨てて、テレビで何を見せたいのか、何を見たいのかを考え直してみるのもよいかもしれません。
●最後までご覧いただき、ありがとうございました
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2009.05.29作成 2009.07.01更新