HR2009-03
2009.03.31 笠原
当社がお客様からご依頼いただくユーザビリティ評価では、製品そのものと同じくらい、付属する取扱説明書が採り上げられることがよくあります。製品のセットアップ、便利な機能を体験する、トラブルシューティング、などなど、あらゆる場面でユーザーと製品との間に立つ取扱説明書は、ユーザーと製品を結ぶインタフェースの1つとも言えます。
実は手間隙かけて作られている取扱説明書ですが、かくいう私も全く目を通さないままの取扱説明書もあれば、購入時に読んだっきり、どこにやったかわからないものもあります。では実際に世の中の取扱説明書はユーザーに「どのように取り扱われているのか」と思い立ち、今回スポットライトを当ててみました。
当社にいつも協力してくださるモニター登録者の方々と当社スタッフにアンケートに答えてもらいました。
質問は次の5つです。
設問1〜3では代表的な電気製品25個について答えてもらい、その他の電気製品がある場合は追加で記述してもらいました。
19歳から77歳の男女、計128名(男性62名、女性66名)の方から回答をいただきました。年齢構成は下のグラフの通りです。
まずは皆さんがそれぞれの電気製品の取扱説明書をどう使っているのかを集計しました。
全体的に「B:初めて使う時一通り読む」と「D:困った時だけ読む」という使い方が多いようです。
「A:接続/設置のページだけ読む」と「D:困った時だけ読む」の両方を回答した人や、「B:初めて使う時一通り読む」と「D:困った時だけ読む」の両方を回答した人もいたので、一概に「1番多い使い方はこれ」とは言い切れませんが、全体の傾向は表していると思います。
製品のジャンルによって傾向があるかどうかを見るために、25の電気製品をざっくりと6つのジャンルに分類してみました。
それから、(表を横に見て)それぞれの製品で最も多かった回答をピンク色の網がけにしました。
AV、ガジェット(携帯用の電子機器)、コンピュータに分類される、より現代的で複雑な製品ほど「D:困った時だけ読む」という回答が多く、生活、調理、季節に分類される、生活に密着した製品ほど「B:初めて使う時一通り読む」という回答が多いという結果が見えてきました。
AV、ガジェット、コンピュータのジャンルの製品は、最初に一通り読んでというよりは、機能が多いのでとにかく使い始めて、困ったときに取扱説明書を読むという使い方が想像できます。
生活、調理、季節のジャンルの製品は、操作方法があまり複雑でないものが多いため、最初に取扱説明書を読んで、使い方をある程度理解してから使い始める人が多いのでしょうか。また、これらの製品は機能や用途が限られているので、使用している途中で新たな操作方法を学ぶ必要が少ないとも言えます。
今度は、(表を縦に見て)取扱説明書の使い方ごとに、数値が大きいもの上位10個の製品を黄色の網がけにしました。
この表を見たとき、「C:使う時に毎回読む」「D:困った時だけ読む」「E:全く読まない」の列で、網がけになった製品のまとまりが見られました。
「D:困った時だけ読む」の列ではAV、ガジェット、コンピュータのジャンルの製品に網がけが多く、上記のピンク色の網がけと同じ傾向があるように見えます。
もう1つ、「C:使う時に毎回読む」の列でもAV、ガジェット、コンピュータのジャンルの製品に網がけが多くなっています。このジャンルの製品はやはり操作方法が複雑なので、使うときには始めから取扱説明書を見ながら操作する人が他の製品と比べると多いということでしょう。
「E:全く読まない」の列を見ると、生活、調理、季節のジャンルで他の製品よりも割合が高くなっています。このジャンルの製品は操作が簡単で機能/用途が限られているものが多いため、取扱説明書を読む必要があまり無いジャンルと言えます。
「A:接続/設置のページだけ読む」と「B:初めて使う時一通り読む」の列では、はっきりとした傾向は読み取れませんでした。
答えてもらった使い方を、製品の種類を分けずに年代ごとに集計しました。年代によって取扱説明書の使い方が違うことがわかりました。
取扱説明書を「B:初めて使う時一通り読む」人は年齢が上がるほど増えています。それに対して、「D:困った時だけ読む」人は年齢が下がるほど増えます。
特に10代20代の若い人ほど最初はほとんど取扱説明書は読まないで、困ったときだけに読む傾向が強いようです。年齢が下がるにつれて電気製品、情報機器に対する恐怖心も少なくなり、「とにかく触ってみよう!」という人が多いのだと思います。
上の集計で取扱説明書は常に使うものでは無いことが分かりました。では、使っていないときはどんな風に保管しているのでしょうか。
まず、製品ごとの取扱説明書の保管状況です。
どの取扱説明書も「ア:本体の近く」か「イ:本体と離れた別の場所」というように、きちんと置き場所が定められているようです。
しかし、その一方で「エ:捨てた」「オ:行方不明(思い出せない)」という回答もちらほらと見られます。「19.トースター」「24.扇風機」「25.照明器具」といった調理や生活のジャンルの製品では特にその傾向が強いようです。全く読まれない取扱説明書はこうなる運命なのでしょうか…。
次に取扱説明書の保管についてどんなルールがあるのかを集計しました。
| 内容 | 回答数 |
| 決まった場所にまとめて保管 | 55 |
| ファイリングして保管 | 47 |
| 製品の近くに置く | 15 |
| 保証書などと一緒に保管 | 8 |
| 製品によって保管場所を決める | 7 |
| 製品の箱の中に保管 | 3 |
| 特になし | 14 |
| その他 | 5 |
| 合計 | 154 |
約3分の2の方が「決まった場所にまとめて保管」「ファイリングして保管」と回答しました。
頂いたコメントも合わせて見ると、クリアファイルを活用して製品ジャンルや部屋ごとに整理して、皆さん結構まめに取扱説明書を整理/保管されているようです。
面白いコメントを2つ紹介します。1つ目はこれ。
「頑張る」
精神論で乗り切るという方法です。
こんな愛情あふれるコメントも頂きました。
「私がいつも取扱説明書を無くしてしまうので、主人が見かねてファイルを作ってくれた。主人が保管してくれない時は、めんどくさがり屋の私は、取りあえずファイルの空いているところに入れてしまうので、後でどのファイルのどこに入れたのか分からなくなってしまう。」
なんだか心が温まります。
最後に取扱説明書の取扱い(特に保管)についての「困った」をまとめました。
| 内容 | 回答数 |
| サイズがばらばら | 19 |
| かさばる | 16 |
| 読む気にならない | 11 |
| 見つからない/場所を忘れる | 5 |
| 廃棄について | 4 |
| 引っ張り出すのが面倒 | 2 |
| 製本タイプがばらばら | 1 |
| 情報が見つけられない | 20 |
| その他 | 11 |
| 合計 | 89 |
約3分の1の方が取扱説明書の「サイズがばらばら」「かさばる」というのを困ったこととして挙げています。メーカーや製品によってサイズや製本方法がまちまちです。また製品によって新聞のチラシのような薄いものから立派なカタログのような取扱説明書もあります。先の質問の結果にあったように、きちんと整理して保管しようという人が多い一方で、整理される取扱説明書は整理しやすいようにはできていないようです。
また、「読む気にならない」「情報が見つけられない」といった取扱説明書の質の問題も挙がっています。これはユーザビリティ評価を行う立場の私も「まだまだ頑張らねば」と気が引き締まるコメントです。
この質問に対するその他の興味深いコメントを紹介します。
1番は取扱説明書の厚さが増すことでユーザーが被る実害と言えるでしょう。
2番は同じメーカーの製品のリピーターにはありがちなトラブルなのかもしれませんね。
3〜6番のコメントは、コンピュータ、インターネットの普及による取扱説明書を取り巻く環境やユーザーの意識の変化を表しているのかもしれません。
製品によって取扱説明書の使用方法、保管方法が異なっていて、概ね予想通りでしたが面白い結果が出たと思います。こういった長期的な使用方法の実態を考慮に入れることも、より使いやすい取扱説明書に近付けるためのヒントになるかもしれません。
私の実感していた取扱説明書に対する不満(困ったこと)も、多くの皆さんと同じでした。普通の感覚を持っていたことに安心したと同時に、私も取扱説明書をきちんとファイリングして整理しようと思いました。
●最後までご覧いただき、ありがとうございました
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2009.03.31作成 2009.07.01更新